ダークファネルとは?BtoB購買の見えない検討行動を可視化する方法

「問い合わせが来たときには、すでに複数社を比較していた」

「初回商談なのに、顧客がサービスの機能や料金をかなり理解している」

「しばらく反応がなかった顧客から、突然問い合わせが来た」

BtoB営業では、このようなことが珍しくありません。

営業側から見ると突然検討が始まったように見えても、顧客側ではその前から情報収集や比較検討が進んでいる可能性があります。

検索をする。

Webサイトを見る。

第三者のレビューを確認する。

生成AIにサービスについて質問する。

同僚に相談する。

営業担当者から以前送られた資料を読み返す。

社内で資料を共有する。

こうした購買行動の中には、企業側のCRMやマーケティングツールでは把握できないものが数多くあります。

このような、企業側から見えにくい購買プロセスを説明する際に使われるのが「ダークファネル」という考え方です。

本記事では、ダークファネルとは何か、なぜBtoB購買で重要なのか、どのような行動が見えなくなるのか、そしてインテントデータを活用してどこまで可視化できるのかを解説します。

ダークファネルとは?

ダークファネルとは、BtoBの購買プロセスにおいて、販売企業のCRMやアクセス解析、マーケティングツールなどから直接把握しにくい情報収集や検討行動を指す言葉です。

厳密に統一された定義がある用語ではありませんが、一般的には「企業側から見えない、または計測やアトリビューションが難しい購買行動」を表す際に使われます。

例えば、

・同僚や知人への相談
・社内チャットでの情報共有
・第三者のレビューサイトでの比較
・SNS上の情報収集
・動画やPodcastでの情報収集
・生成AIへの質問
・匿名でのWebサイト閲覧
・営業資料の社内共有

などです。

従来のマーケティングファネルでは、

認知

↓

興味・関心

↓

比較・検討

↓

問い合わせ

↓

商談

というように、顧客が段階的に進むモデルで説明されることが多くありました。

しかし、実際のBtoB購買は必ずしも一直線には進みません。

複数の担当者が別々に情報を集めたり、一度検討を止めて数か月後に再開したり、営業担当者に連絡する前にかなり詳しく比較したりします。

この「企業側から十分に見えていない部分」がダークファネルです。

なぜBtoB購買ではダークファネルが生まれるのか

BtoBの購買行動がオンライン化したことで、顧客自身が営業担当者に頼らず情報を集められるようになりました。

Webサイト、比較サイト、SNS、動画、オンラインコミュニティ、生成AIなど、情報源は大きく増えています。

その結果、営業担当者と直接話していない時間にも、顧客の検討は進みます。

顧客は営業担当者と話していない時間にも検討している

例えば、営業担当者が商談後に資料を送ったとします。

その後2週間、顧客から連絡がありません。

営業側から見ると、

「検討が止まっている」

ように見えるかもしれません。

しかし実際には、

担当者が営業資料を読み直す

↓

上司に共有する

↓

社内で比較検討する

↓

競合サービスを検索する

↓

料金を確認する

↓

別部署がセキュリティについて確認する

といった行動が進んでいる可能性があります。

CRMに新しい活動履歴が記録されていなくても、顧客側の購買プロセスは進んでいるのです。

ダークファネルで見えなくなりやすい行動

ダークファネルには、さまざまな行動が含まれます。

社内での会話や情報共有

BtoB購買では、一人の担当者だけで意思決定するとは限りません。

担当者が上司へ相談する。

SlackやTeamsでサービスURLを共有する。

営業資料を社内へ転送する。

情報システム部門にセキュリティ確認を依頼する。

こうした社内コミュニケーションを、販売側がすべて把握することは困難です。

検索や第三者サイトでの情報収集

顧客は自社サイトだけを見て比較するわけではありません。

検索エンジン、レビューサイト、SNS、業界メディア、動画などを利用して情報を集めます。

販売企業から見ると、

「問い合わせフォームを送信した」

という最終的な行動しか分からなくても、その前には多くの情報収集が存在している可能性があります。

生成AIを利用した情報収集

生成AIの普及によって、購買担当者がAIに直接質問しながら比較検討を進めるケースも増えています。

例えば、

「この課題を解決できるサービスは?」

「A社とB社の違いは?」

「営業DXツールを比較して」

といった質問です。

サービスサイトを一つずつ訪問しなくても、AI上で情報を整理できるため、従来のアクセス解析だけでは捉えられない情報収集が増える可能性があります。

匿名でのWebサイト閲覧

自社Webサイトにアクセスしていても、フォーム送信などで個人が識別されるまでは、「誰が見ているのか」まで分からない場合があります。

アクセス数は分かっても、その人物がどの商談に関係しているのか、どの担当者なのかまでは分からない。

これも購買行動が見えにくくなる要因の一つです。

営業資料を送った後の行動

営業活動において特に見落とされやすいのが、資料を送った後です。

PDFをメールに添付して送信した場合、

資料を開いたのか

最後まで読んだのか

どこに興味を持ったのか

何度読み返したのか

社内でどのように検討されたのか

が分からないケースがあります。

営業側では「資料送付済み」という一つの活動履歴しか残らなくても、その後の資料上では検討が進んでいる可能性があります。

ダークファネルとダークソーシャルの違い

ダークファネルと似た言葉に「ダークソーシャル」があります。

両者は同じものではありません。

ダークソーシャルは、主に計測しにくいプライベートな情報共有を指します。

例えば、

・チャットでURLを共有する
・メールで記事を転送する
・DMでサービスを紹介する
・オンラインコミュニティ内で情報交換する

といった行動です。

一方、ダークファネルはより広い概念として使われます。

ダークソーシャルでの情報共有だけでなく、

匿名での情報収集

第三者サイトでの比較

社内検討

生成AIの利用

営業資料を利用した検討

など、企業側から見えにくい購買プロセス全体を表します。

ダークファネルが営業に与える3つの問題

ダークファネルが大きくなると、営業活動にも影響します。

1. 営業するタイミングが分からない

最も大きな問題は、顧客の検討が動いたタイミングを把握できないことです。

例えば3か月前に、

「まだ検討時期ではありません」

と言われた顧客がいたとします。

営業担当者は、

「3か月後に連絡する」

と予定を設定するかもしれません。

しかし実際の顧客は、1か月後に社内プロジェクトが動き始めている可能性があります。

顧客の行動が見えなければ、営業担当者が設定したタイミングでしかフォローできません。

2. 顧客が何に関心を持っているのか分からない

問い合わせや商談が発生しても、それまでに顧客が何を調べていたのかが分からなければ、営業は最初からヒアリングする必要があります。

一方、

導入事例を詳しく確認している

料金を確認している

セキュリティ情報を確認している

と分かれば、顧客が現在どのような情報を必要としているのかを推測できます。

3. 営業側と顧客側の認識に差が生まれる

営業担当者は、

「まだ情報収集段階」

だと思っていても、顧客はすでに複数社を比較し、最終候補を絞っているかもしれません。

反対に、

「かなり検討度が高い」

と思って頻繁に営業していても、顧客はまだ初期の情報収集段階かもしれません。

顧客の行動が見えないことで、営業側が考える検討フェーズと、実際の顧客の状態にズレが生じます。

ダークファネルは完全に可視化できるのか

結論として、ダークファネルをすべて可視化することは困難です。

同僚との会話。

社内会議。

プライベートなメッセージ。

生成AIへの質問。

第三者サイトでの情報収集。

こうした活動を販売企業がすべて追跡することはできませんし、追跡すべきでもありません。

そのため、ダークファネル対策の目的を、

「すべての顧客行動を監視すること」

と考えるのは適切ではありません。

重要なのは、自社が適切に取得できる顧客接点から、購買意向を示すシグナルを捉えることです。

インテントデータで「見える部分」を増やす

そこで利用できるのが、インテントデータです。

インテントデータとは、企業や個人の行動から、関心や検討状況を推測するためのデータです。

例えば、

料金ページを閲覧した

資料をダウンロードした

営業資料を再閲覧した

導入事例を詳しく確認した

といった行動です。

ダークファネルそのものを完全に見えるようにすることはできません。

しかし、購買プロセスの中で発生するシグナルを捉えることで、

「何も見えない状態」

から、

「一部の検討行動が見える状態」

へ変えることはできます。

インテントデータの基本については、以下の記事で詳しく解説しています。

▶️ インテントデータとは?BtoB営業での活用方法をわかりやすく解説

ファーストパーティ・インテントが重要になる理由

ダークファネルを考えるうえで、特に重要なのがファーストパーティ・インテントデータです。

ファーストパーティ・インテントデータとは、自社の顧客接点から直接取得する行動データのうち、顧客の関心や検討状況を判断するために利用できるデータです。

例えば、

・自社サイトの閲覧
・料金ページの確認
・メール内URLのクリック
・資料ダウンロード
・営業資料の閲覧
・資料の再閲覧
・問い合わせ

などがあります。

外部の見えない行動ではなく、自社との接点を見る

顧客が社内で何を話しているかは分かりません。

しかし、社内会議の後に営業資料を再閲覧したことは捉えられる場合があります。

競合サービスについてどのような会話をしたかは分かりません。

しかし、その直後に料金ページや導入事例を確認したことは捉えられる場合があります。

つまり、ダークファネルそのものを見るのではなく、その途中や結果として自社との接点に現れた行動を捉えるという考え方です。

ファーストパーティ・インテントデータについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

▶️ ファーストパーティ・インテントデータとは?BtoB営業での活用方法

企業インテントから個人インテントへ

企業単位のインテントデータを利用すると、

「A社で営業DXへの関心が高まっている」

といった情報を把握できる場合があります。

これは営業対象となる企業を見つける際に有効です。

しかし、実際の営業アクションでは、

誰に連絡するのか

何について話すのか

いつフォローするのか

まで判断する必要があります。

そこで重要になるのが個人インテントです。

例えば、

「A社の田中さんが昨日、以前送った資料を再閲覧した」

「料金と導入事例を重点的に確認した」

と分かれば、具体的な営業アクションにつなげやすくなります。

▶️ 企業インテントと個人インテントの違い|BtoB営業で重要なのはどちら?

資料閲覧データから見えなかった検討行動を捉える

BtoB購買において、営業資料は重要な顧客接点の一つです。

商談後。

資料請求後。

展示会後。

ウェビナー後。

過去顧客への情報提供。

さまざまな場面で資料が共有されます。

しかし、PDFをメールに添付して送るだけでは、その後の顧客行動が見えない場合があります。

資料送付から次の商談までをブラックボックスにしない

例えば、

商談

↓

資料送付

↓

???

↓

次回商談

となっている営業プロセスを考えます。

この「???」の期間には、

資料を読む

社内で共有する

事例を確認する

料金を確認する

資料を読み返す

といった、さまざまな検討行動が発生している可能性があります。

資料閲覧データを取得できれば、

誰が閲覧したのか

いつ閲覧したのか

どのページを見たのか

どの程度閲覧したのか

再閲覧したのか

といった情報を確認できます。

これによって、ダークファネルのすべてではありませんが、これまで見えなかった「資料上の検討行動」を可視化できます。

ダークファネルのシグナルを営業アクションにつなげる

顧客行動が見えるようになっても、それだけでは十分ではありません。

重要なのは、データを次の営業アクションにつなげることです。

再閲覧をフォローのタイミングにする

過去に送った資料が突然再閲覧された場合、顧客側で何らかの検討が再開している可能性があります。

必ず購買意欲が高いとは限りませんが、営業担当者が状況を確認するためのシグナルになります。

関心ページから提供する情報を変える

導入事例への関心が高ければ、類似企業の事例を案内する。

料金への関心が高ければ、費用や契約条件を補足する。

セキュリティへの関心が高ければ、セキュリティ資料を案内する。

行動を「見た・見ていない」で終わらせず、何に関心を持っているかまで見ることが重要です。

すべてのシグナルで営業しない

顧客が行動したからといって、すぐ電話をかける必要はありません。

情報収集段階であれば、関連コンテンツを提供する。

検討が具体化していれば、相談を提案する。

インテントに合わせて次のアクションを変える必要があります。

このような営業方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。

▶️ インテントセールスとは?従来の営業との違いと実践方法

AIを組み合わせて「見えたシグナル」を判断する

顧客行動のデータが増えると、営業担当者が一つひとつ確認することが難しくなります。

そこでAIを組み合わせることもできます。

例えば、

資料閲覧データ

+

CRMの顧客情報

+

過去の商談履歴

+

メール履歴

をAIが参照します。

すると、

「誰が動いたのか」

「何に関心を持っているのか」

「過去にどのような話をしていたのか」

「今フォローすべきなのか」

「次に何を案内すべきなのか」

を総合的に判断しやすくなります。

ダークファネルを可視化するだけでなく、次のアクションへ

例えば、

3か月前に「時期尚早」で商談終了

↓

昨日、営業資料を再閲覧

↓

料金と導入事例を重点的に確認

という行動が発生したとします。

AIがCRMや過去の商談内容まで参照できれば、

「検討が再開している可能性がある」

「以前は費用対効果が課題だった」

「今回は料金と導入事例への関心が高い」

という情報を組み合わせ、適切な営業フォローを提案できます。

AIによってインテント検知から営業フォローまでつなげる方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

▶️ インテントデータ×AIとは?AIエージェントで営業フォローを自動化する方法

ダークファネル対策で注意したいこと

ダークファネルという考え方を営業・マーケティングに取り入れる際には、注意点もあります。

すべてを可視化しようとしない

顧客の購買行動には、販売企業が知る必要のないものもあります。

社内会話やプライベートな情報収集まで完全に追跡する必要はありません。

重要なのは、自社が適切に取得できるデータの中から、営業に意味のあるシグナルを見つけることです。

行動を購買意思と断定しない

資料を再閲覧したからといって、購入が決まったわけではありません。

料金ページを見たからといって、すぐ商談を希望しているとも限りません。

インテントデータは購買意思そのものではなく、あくまで検討の可能性を示すシグナルです。

過去の接点や他の行動と組み合わせて判断する必要があります。

顧客に監視されている印象を与えない

営業担当者が、

「昨日このページを3回見ていましたよね」

と伝える必要はありません。

行動データは営業側の判断材料として利用し、

「比較検討の際によくご確認いただく事例をご案内します」

といった自然な情報提供へ変換することが重要です。

GRiXで資料送付後の「見えない検討」を可視化

営業コンテンツクラウド「GRiX」では、顧客に共有した資料や動画について、個人・コンテンツ単位の閲覧行動を可視化できます。

例えば、

・誰が閲覧したか
・いつ閲覧したか
・どのページを閲覧したか
・どのページに長く滞在したか
・何度閲覧したか
・再閲覧したか

といった情報です。

GRiXはダークファネル全体を可視化するものではありません。

しかし、従来「資料を送った後は分からない」となっていた営業プロセスについて、自社コンテンツ上で発生した顧客行動をファーストパーティ・インテントデータとして捉えることができます。

「資料を送って待つ」から「顧客の動きを捉えてフォローする」へ

従来は、

資料を送る

↓

一定期間待つ

↓

営業担当者が連絡する

というフォローが一般的でした。

資料閲覧データを利用すると、

資料を送る

↓

顧客が閲覧する

↓

関心ページや再閲覧を確認する

↓

関心に合わせてフォローする

という営業に変えることができます。

営業担当者の予定を起点にするのではなく、顧客の行動を営業のきっかけとして活用できるようになります。

まとめ|ダークファネルをなくすのではなく「見えるシグナル」を増やす

ダークファネルとは、BtoB購買において、販売企業のCRMやマーケティングツールでは把握しにくい情報収集や検討行動を表す考え方です。

現在のBtoB購買では、

検索

第三者サイト

SNS

生成AI

社内コミュニケーション

営業資料

など、さまざまな場所で検討が進みます。

そのすべてを販売企業が可視化することはできません。

重要なのは、ダークファネルを完全になくすことではありません。

自社が適切に取得できる顧客接点から、

誰が

いつ

何に

どの程度

関心を示したのかというシグナルを捉えることです。

Webサイトの閲覧。

資料ダウンロード。

営業資料の閲覧。

再閲覧。

こうしたファーストパーティ・インテントデータを活用することで、「何も見えなかった購買プロセス」の一部を営業判断に利用できるようになります。

ダークファネルをすべて照らすのではなく、営業アクションにつながるシグナルを一つずつ見えるようにする。

それが、BtoB営業における現実的なダークファネルへの向き合い方です。

資料閲覧から「見えない検討」を可視化するGRiX

GRiXは、営業資料や動画を共有した後の顧客行動を可視化し、「誰が・いつ・何に・どの程度」関心を持っているのかを把握できる営業コンテンツクラウドです。

資料送付後の閲覧ページ、滞在状況、再閲覧などをファーストパーティ・インテントデータとして捉えることで、これまで見えにくかった検討行動を営業フォローに活用できます。

さらにCRMや営業履歴などの情報と組み合わせることで、AIを活用した顧客ごとの営業フォローにつなげることも可能です。

▶️ GRiXサービス概要資料のダウンロードはこちら

公式サイト:https://www.aimytech.co.jp/grix

参考情報

BtoB購買においてデジタルセルフサービス、リモート、対面など複数のチャネルを横断して購買が進む考え方について、McKinsey & Companyの公開情報を参考にしています。

また、BtoB購買におけるBuying Groupやデジタル上の購買行動について、GartnerおよびAdobeの公開情報を参考にしています。

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