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あらゆる営業が、「顧客と信頼関係を構築すること」の重要さを知っています。しかし、「どうすれば信頼関係を築けるのか?」と体系的な方法について質問をされると、返答に窮する方が少なくありません。
そこで本記事では、営業が信頼関係を構築するまでのプロセスと、信頼関係構築で重要な5つのことを解説します。「顧客と信頼関係を構築する方法を部下や後輩に教えたいけれど、体系的に考えるのは難しい」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
|そもそも「顧客との信頼関係」とは?

顧客との信頼関係構築を行う(あるいは誰かに教える)にあたってまず大切なのは、「顧客との信頼関係とは何か?」という定義を明確に持つことです。
信頼の意味は、文字通り「信じて頼る」です。つまり、顧客が営業を信じ、「この人なら色々と任せられる」と頼っている状態が、顧客との信頼関係だと言えます。
「そんな当たり前のことを今さら」と思う方もいるでしょう。しかし、こうした当たり前のことを明確に定義し、部門全体や担当者同士で共通認識を持って営業活動に取り組まなければ、コミュニケーションを妨げる原因となります。
上司と部下、先輩と後輩、同僚同士、他人同士が集まる組織においては、「当たり前のことを定義する」を心がけると、コミュニケーションの濃度や生産性が飛躍します。
信頼関係構築が欠かせない理由
顧客との信頼関係構築が欠かせない理由については、「お客様に自社の製品やサービスを選んで(買って)もらうため」というのが一般的な考えです。実際のところ、営業のあらゆる活動が自社の製品やサービスを売るためにあるので、理由として間違いではありません。
一方で、天才的な営業センスによって信頼関係を築く前に、製品やサービスを売る営業も存在します。したがって、前述の理由づけでは不十分であり、顧客との信頼関係構築が欠かせない理由についても、細かく明確な定義が欠かせません。
複雑化・長期化している購買プロセスにおいて、自社の製品やサービスを優先的に検討してもらう
自社の製品やサービスに対するロイヤリティを高め、営業の段階からリテンション戦略(※)を取り入れる
以上のように、顧客との信頼関係とは何か?信頼関係構築はなぜ欠かせないのか?を明確かつ細かく定義することが、営業部門内におけるコミュニケーションの円滑化に役立ちます。
※ 既存顧客との関係性維持・向上に取り組み、製品やサービスの離脱・解約を防ぐこと
|顧客と信頼関係を構築するまでのプロセス

顧客との信頼関係は、最初のコンタクトを取ったときから「警戒」「疑心」「新和」「信用」「信頼」というプロセスで構築されます。ここでは、プロセスごとの顧客の心情や行動について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
警戒:受け入れてもらえない状態
警戒は、顧客からまだ「受け入れてもらえない状態」を指します。たとえば、営業リストをもとに架電するケースや飛び込み営業では、顧客との関係が警戒状態からスタートします。そのため、従来は当たり前に行われていたアウトバウンドセールスは、難度のかなり高い営業手法と言えるでしょう。
警戒から次のプロセスに進めるためには、「私はあなたの味方です」という姿勢を見せる必要があります。したがって、「自社の製品やサービスを売りたい!」という売り込み感の強い営業よりも、「もしかしてこんな問題を抱えていませんか?」と少しでも寄り添える営業の方が、信頼関係を構築しやすいでしょう。
顧客から警戒されている状態ではあらゆるコミュニケーションを拒絶される可能性が高いため、「警戒→疑心」をどのようにシンプル化するかで成約率が変わると言っても、過言ではありません。
疑心:信じてもらえていない状態
疑心は、顧客の「警戒は解けたが信じてもらえていない状態」です。売上が上がらない営業の多くは、警戒から疑心にステップアップした段階で「案件化(商談)できる」と勘違いをして、製品やサービスの売り込みをしてしまいます。
しかし、顧客からすると「時間もあるし話を聞くだけなら」程度の関係なので、いきなり製品やサービスの話をされても、「売り込み感の強い営業」という印象しか与えられません。
このプロセスで重要なのは、「私はあなたの味方です」という姿勢をより強く見せることです。つまり、顧客が抱いている疑心を、「安心」に変える必要があります。会話のアイスブレイクを長めに取ったり、「顧客を理解し自分を知ってもらうこと」に専念したり、どうすれば疑心を安心に変えられるか、試行錯誤しながら最適なスタイルを模索してみましょう。
親和:親しみを持たれている状態
新和は、警戒・疑心というプロセスを経て「親しみを持たれている状態」です。つまり、顧客は営業に対して心を開き始めています。とはいえ、まだ親しみを持っている程度なので、やはり製品やサービスの売り込みは厳禁です。
このプロセスにおいて重要なのは、「自分(自社)と相性の良い人(会社)だ」と顧客に感じてもらうことです。相性の良さを感じてもらうにあたっては、ミラーリングやマッチングといった心理的テクニックが役立ちます。
これについては、記事後半の「顧客との信頼関係構築に使える心理的テクニック」の章で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。ちなみに、警戒・疑心の段階で心理的テクニックを利用しても逆効果なので注意しましょう。
信用:信じてもらえている状態
信用は、この人(会社)なら大丈夫と「信じてもらえている状態」です。では、何が信用をつくるのか?というと、それは「些細なことの積み重ね」です。
たとえば初回アポイントの後、「当日にお礼メールを送信する営業」と「翌日にお礼メールを送信する営業」、顧客から見て心象が良いのは前者でしょう。また、約束の時間に対して「5分前に到着する営業」と「時間ピッタリに到着する営業」、心象が良いのはやはり前者です。
こうした、「加点にはならないけれど減点されない些細なこと」の積み重ねが信用をつくります。これについては、次章の「顧客との信頼関係構築で重要な5つのこと」でも詳しく解説しているので、引き続きご覧ください。
信頼:心を開いてくれている状態
信頼は、顧客が「心を開いてくれている状態」であり、営業および自社の製品やサービスに対してロイヤリティの高い状態でもあります。「信用」と「信頼」の違いについては、以下を参考にしてください。
信用 | 信頼 | |
指標になるもの | 過去の実績や成果 | 未来への期待 |
判断基準 | 客観的な判断に基づく | 感情的な判断に基づく |
相手の心情 | この人(会社)に相談してみたい | この人(会社)に任せてみたい |
築き方 | 減点方式 | 加点方式 |
顧客から信頼を得るために欠かせないのが、「期待値を超える」です。たとえば、顧客から相談された事柄に対して「それなら我が社のこの製品がおすすめです!AI搭載の機能により〜」とただ売り込むのではなく、ストーリーテリングやスループットを交え、顧客の期待値を超えることで信頼を得やすくなります。
|顧客との信頼関係構築で重要な5つのこと

それでは、顧客との信頼関係構築で重要な5つのことを解説します。とりわけ、前章で解説した「信用」「信頼」のプロセスにおいて重要なことなので、顧客との信頼関係構築のためにぜひ参考にしてみてください。
1. 当たり前のことを、当たり前にやる
前述のように、信用は「些細なことの積み重ね」によって生まれます。そのため、営業やビジネスパーソンとして「当たり前のことを、当たり前にやる」ことがとても重要です。
時間を守る、期日を守る、有言実行、丁寧な言葉づかいをするなど、細かく挙げるときりがありません。しかし、その一つひとつを着実に実行する以外に、顧客から信用を得る方法はないのです。
2. 見た目の清潔感を徹底して整える
多くの営業部門では、新人の営業に対して「清潔感を持て」と口を酸っぱくして指導します。営業が清潔感を徹底して整えるべき理由は、「私はあなたを軽く見ています」という印象を与えないことです。
たとえば、記念日のデートにサンダルを履いている男性と、ビシッと決めたスーツを着ている男性、心象が良いのは圧倒的に後者です。「スーツを着ているから」という理由で心象が上がることはないかもしれませんが、だらしない格好では心象が下がります。
つまり、顧客から減点されて信用を失わないためにも、見た目の清潔感を徹底して整えることが重要なのです。
3. 顧客への理解を深める
「顧客を理解しろ」という言葉も、営業部門で耳にタコができるほど聞く言葉です。一口に顧客理解といっても、市場や消費者など顧客を取り巻く環境、抱えているニーズ、解決したい課題、社内における問題など、理解すべきポイントは多岐に渡ります。
顧客理解を深めた上で、顧客に合ったストーリーテリングを提示したり、スループットを行ったり、こうした取り組みが顧客との信頼関係を築いていきます。
4. 顧客のお客様への理解も深める
営業のゴールが「お客様に製品やサービスを買ってもらうこと」であるように、顧客のゴールにも常にお客様が存在します。そのため、営業は顧客だけでなく「顧客のお客様への理解も深める」ことが大切です。
また、お客様とは消費者や営業先企業だけでなく、社内ステークホルダーもお客様と捉えなくてはいけません。たとえば、自社が営業ツールを売っているなら、顧客(導入担当者)の消費者や営業先企業はもちろんのこと、営業ツールを使用する社内関係者、決裁権を持つ経営層なども、顧客(導入担当者)にとってのお客様です。
5. 顧客の心情の変化/行動の変化を知る
顧客の心情および行動は、時間の経過、競合の存在、新しいことへの興味・関心など、さまざまな要因によって変化します。こうした顧客の心情の変化/行動の変化を知り、その都度最適な提案ができる営業は、顧客と強い信頼関係を築けるでしょう。
これを可能にするのが営業分析であり、『【永久保存版】営業におけるデータ分析方法を徹底解説 | ポイントと手法』ではこれを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
|顧客との信頼関係構築に使える心理的テクニック

それでは最後に、顧客との信頼関係構築に使える心理的テクニックをご紹介します。信頼関係構築プロセスにおける、「親和・信用・信頼」で適宜取り入れると高い効果が期待できるので、ぜひ活用してみてください。
ミラーリング
ミラーリングとは、相手の言動を模倣する心理的テクニックです。心理学では、「自分と同じような言動を取る相手に親近感を持ちやすい」とされており、これをミラーリング効果と呼びます。
このミラーリング効果を活用し、相手の言動を模倣することで、親近感を持たれやすくなります。ただし、過度のミラーリングは疎ましく感じられる可能性が高いので、注意してください。
ポイントは、言葉づかいや仕草など無意識下でやっているであろう言動を模倣し、自然な形で親近感を持ってもらうことです。
マッチング
マッチングとは、ミラーリングの一種であり、会話のテンポや声の強弱などを合わせる心理的テクニックです。これにより、「この人と話していると心地よい」と感じてもらえるため、顧客との信頼関係を築きやすくなります。
また、マッチングと類似した心理的テクニックに「ペーシング」があります。これは言動のペースを相手に合わせることで、マッチングと同じ効果が期待できるものです。
キャリブレーション
キャリブレーションとは、相手の心理状態を言葉以外のサインで認識する心理的テクニックです。表情、姿勢、身振り、声の大きさ、会話のリズム、こうした情報を冷静かつ客観的にとらえるのがポイントとなります。
キャリブレーションは経験則によってスキルが向上する心理的テクニックなので、難度は少し高めです。日頃の営業において顧客をよく観察し、一つひとつの言動が持つ心理学的意味なども理解すると、キャリブレーションスキルが飛躍し、信頼関係を構築しやすくなるでしょう。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、いわゆる「オウム返し」を活用した心理的テクニックです。相手の言葉をそのまま返すことには安心感や信頼感を与える効果があり、心理療法でもバックトラッキングが使用されています。
ポイントは、「正確にバックトラッキングをする」です。たとえば、相手の「〇〇なんてことがあってさ、残念だったよ」という発言に対して、「それは悔しいかったですね」と異なる言葉を返してしまうと、「(いや、悔しくはないけど...)」と違和感を持たせる可能性があります。
この場合は、「それは残念でしたね」と相手の言葉をそのまま返すのがバックトラッキングにおける正解です。
|まとめ

顧客との信頼関係構築は、営業部門において暗黙知になっているケースが少なくありません。これを放置していては、新人を効率よく育てるのも、部門全体のパフォーマンスを底上げするのも難しいでしょう。
まずは、本記事でご紹介したように「顧客との信頼関係とは何か?なぜ重要なのか?」という部分から、明確に定義してみてください。その上で、信頼関係構築のプロセスやアクションを設計し、自社独自の「顧客との信頼関係の構築方法」を作り上げましょう。
